テーマは『3』または『縁』
私は『縁』の方で制作しました。
本との出会いもひとつの縁であるという考えで、
大好きな村上春樹さんの『海辺のカフカ』から絵を描きました。
『時の流れのない場所』は15歳の少女の幽霊と月明かりに浮かぶハナミズキ。
『記憶という名の象徴(しるし)』は19歳の佐伯さん。
言葉と一緒に絵を楽しんでもらえたら嬉しいです。
『時の流れのない場所 - 15歳の少女の幽霊 -』
私は孤独だった。
ひとりぼっちではなかったけれど、それでもひどく孤独だった。
どうしてかといえば、自分がこれ以上幸福になれっこないということがわかっていたから。
だからそのときのかたちのまま、私は時の流れのない場所に入ってしまいたかった。
* * * * * *
僕らの人生にはもう後戻りができないというポイントがある。
それからケースとしてはずっと少ないけれど、
もうこれから先には進めないというポイントがある。(村上春樹著『海辺のカフカ』より抜粋)
『 記憶という名の象徴(しるし) - 19歳の佐伯さん - 』
思い出というのは、いったいどのようなものでありましょうか?
思い出はあなたの身体を内側から温めてくれます。
でもそれと同時にあなたの身体を内側から激しく切り裂いていきます。
思い出というのは、いったいどのようなものでありましょうか?
思い出はあなたの身体を内側から温めてくれます。
でもそれと同時にあなたの身体を内側から激しく切り裂いていきます。
* * * * * *
「どれだけそれが苦しくありましても、
サエキさんはその思い出を手ばなしたくはなかったのでありましょう?」
「はい。そのとおりです。
それを抱えていることがどんなに苦しくても、生きている限り私はその記憶を手ばなしたいとは思いません。
それが私の生きてきたことの唯一の意味であり証でした」
* * * * * *
「私があなたに求めていることはたったひとつ。あなたに私のことを覚えていてほしいの。
あなたさえ私のことを覚えていてくれれば、ほかのすべての人に忘れられたってかまわない」
「記憶というのはそんなに大事なものなんですか?」
「それは場合によってはなによりも大事なものになるのよ」(村上春樹著『海辺のカフカ』より抜粋)