2015年8月8日土曜日

ITmedia名作文庫 太宰治『新ハムレット』の連載が始まっています。



苦しみが苦しみを生み、悲しみが悲しみを生み、溜息が溜息をふやす。自殺。のがれる法は、それだけだ。(p29)


だから、だから、それだから僕は、くるしんでいるのです。くるしい時に、くるしいと言ってはいけないのですか?なぜですか?僕は、いつでも、思っていることをそのまま言っているだけです。素直に言っているのです。本当に、淋しいから、淋しいと言うのです。勇気を得たから、勇気を得たと言うのです。なんの駆け引きも、間隙も無いのです。精一ぱいの言葉です。(p111)


愛は言葉だ。言葉が無くなれや、同時にこの世の中に、愛情も無くなるんだ。愛が言葉以外に、実体として何かあると思っていたら、大間違いだ。(p219)







男性の方の画は、物語の最後の部分の、ハムレットが自分自身を切り裂くところから描きました。

女性の方の画は、下記の部分から描きました。
王妃であり、オフィーリアでもある女性像です。ドレスの裾は小川の水を(水が溜っている感じを)表現しました。

王妃。「紫蘭の花のことを、しもじもの者たちは、なんと呼んでいるか、オフィリヤは、ご存じかな?(中略)まさか、あの露骨な名前で呼んでいるわけでもないでしょう。」
オフ。「いいえ、王妃さま、あたしたちだって、やっぱり同じ事でございます。(中略)
でも、男のひとの居る前では気を附けて、死人の指、なぞという名で呼んでいますの。」
王妃。「死人の指とはまた考えたものですね。死人の指。なるほどねえ。そんな感じがしない事もない。可哀そうな花。金の指輪をはめた死人の指。」(p128-129)

http://classics.itmedia.co.jp/dazaiosamu/shinhamlet/
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新ハムレット太宰治

太宰治の中期を代表する作品の1つで、最初の書き下ろし長編となった『新ハムレット』は、1941年7月2日、文藝春秋社から発行されました。同年2月から5月まで、かなりの意気込みで執筆されたものです。シェイクスピアの名作に挑んだという点では、志賀直哉の「クローヂヤスの日記」と比較されることもあります。ITmedia 名作文庫では前記文藝春秋版を底本に、巻頭に解説『「かすかな室内楽」としての小説』(北条一浩)を収録しました。2010年の常用漢字改定に照らし合わせ人名ともに現代仮名遣いへ改めるとともに、常用外漢字にはルビを振り読みやすくした縦書版電子書籍です。(近日刊行予定)




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